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久宝寺遺跡(多目的広場)

久宝寺1号墳 現地公開資料

平成13年 8月26日(土)13:00〜15:00
財団法人 大阪府文化財調査研究センター
中部調査事務所 調査第三係

 久宝寺遺跡(多目的広場)は、都市基盤整備公団・八尾市・大阪府による、旧国鉄竜華操車場跡地再開発事業(大阪竜華都市拠点)に伴う発掘調査の一環として、平成13年2月から調査を実施している。調査区は、JR大和路線久宝寺駅南側に位置しており、調査面積は3,156Fである。
 この度「久宝寺1号墳」と名付けた古墳は、調査区の南西端付近で検出された。墳丘西裾から周溝にかけての一部が調査区外に及んでいるが、主要な部分についてはほぼ把握することができた。
 久宝寺1号墳は墳丘の平面が方形を呈した方墳である。その規模は東西辺約12.5m(復元値)、南北辺約10.5mで、東西辺がやや長くなっている。その周囲には幅0.7〜4.0m、深さ0.5mの周溝が巡る。
 墳丘は庄内式期(3世紀頃)に形成された黒色土壌化層をベースとし、周溝の堀削に伴ってできた排土を盛土整形して築造されている。基盤面高はT.P.6.2m、墳頂部分はT.P.7.0m、その沈高差は0.8mである。後世の削平をほとんど受けておらず、周溝底からの墳丘高1.7mに達する。
 墳頂部に南北約4.6m、東西約1.8mの墓墳を掘り、その中に割竹形木棺を据えている。棺自体の遺存状態はきわめて良好で、棺身、棺蓋ともにほぼ原形をとどめている。その規模は長さ約3.2m、幅約0.4mで、樹種はコウヤマキとみられる。木棺の内部はくり抜かれ、その北側と南側に約1.7mの間隔をあけて円形の仕切板が立てられていた。この板によって木棺周囲の土砂の流入が妨げられており、遺骸を納める埋葬区画はほとんど中空のまま保たれていた。埋葬区画内の棺底からは、両仕切板の付近で歯牙が検出された。このことから、二体の遺骸が頭位を違えて埋葬されていた可能性もある(対向埋葬)。北側の歯牙付近には朱の痕跡が認められた。なお、現役階では副葬品は検出されていない。
 この主体部の西側の墓填外には、土器棺とみられる大形壷が埋められている。
 割竹形木棺が完存する事例は全国的にみてもきわめて珍しく、また本墳のものは明確な割竹形木棺遺存例として最古の一例に属し、重要な調査例となる。
 他に、墳丘東側の周溝底から木棺墓1基、土壌墓2基、土器棺墓2基が検出され、墳丘上の被葬者に関係する人物の墓が集中して築かれている。
 出土した土器は布留式土器を主体とする。それらのうち、墳丘上では墳頂部の四隅に1個づつ同じ形の壷が配置されており、墳頂部を区画する役目を担ったとみられる。また周溝内では、北側の溝底から有段口縁鉢、小形丸底土器、最終段階の庄内式甕が集中して出土した。被葬者に対する祭祀の土器群とみられる。
 また、墳丘北側斜面では、祭祀土器群に近接して柵状木製品が出土している。
 久宝寺1号墳の築造時期は、出土土器からみて布留式古段階(3世紀末)である。調査区の周辺では3世紀を中心として多数の墳墓が築造されている。なかでも久宝寺1号墳の保存状態は墳丘、内部主体ともに屈指のものであり、その調査成果は今後の古墳研究に大きく寄与することとなろう。

 

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