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今城塚古墳

説明文調査位置図北側造出と現場写真埴輪祭祀区と現場写真

第6次今城塚古墳の調査(現地説明会資料)
調 査 地 高槻市郡家新町
調査期間  平成14年5月28日〜現在調査中
調査主体  高槻市教育委員会 文化財課
調査面積  約1600平方メートル
譲査担当者 宮崎康雄 西村恵祥

1.はじめに

 今城塚古墳は6世紀前半に築かれた淀川北岸で最大の前方後円墳です。全長190mの墳丘の周囲には二重の濠と肉堤が巡り、総長は350mをはかります。「今城」の名は戦国時代に墳丘や濠を利用して城砦とされたことに由来します。
 本市教育委員会では今城塚古墳の保存整備に向けて平成9年度から規模確認調査を実施し、過去5回の調査では、墳丘や内・外濠などの規模や形状、その後の改変の様子などを知る手がかりを得たほか、昨年の第5次調査では内堤での埴輪祭祀区の状況をはじめて確認することができました。
 今回の第6次調査は、昨年の調査で検出した埴輪祭祀区の範囲や状況を追求するために第5次調査区の東西に調査区を設定しました。また、墳丘での祭祀の壕となる造出の状況を把握するための調査を実施しています。

2.調査でみつかったもの

<内堤>
 内堤では外濠側円筒埴輪列と埴輪祭祀区の形象埴輪群及び溝2条などを検出しました。 円筒埴輪列は第5次調査で見つかった埴輪列の延長線上に並んでいました。底部付近のみ現存し、破損や散逸によって本来の位置をとどめていないものもあります。東側調査区では円筒埴輪の上半部を打ち欠いた底部2個体分の上にまたがった形で3基の円筒埴輪を立て並べていた箇所があり、祭祀区とのかかわりが考えられます。
(上下に重なる円筒埴輪)
 形象埴輪には
家形3、冊形10、器財(蓋形2、太刀形4)、人物(巫女形2)、動物(馬形?9・水鳥形2)など30点以上あり、基底部が遺存して本来の位置がわかるものだけでも26点を教えます。家形は東側調査区でみつかりました。上屋根を千木や竪魚木で飾る円柱高床式の大形建物1棟と壁立式の小形建物が2棟あり、いずれもすぐ脇で土器(土師器甕)がみつかりました。冊形は2ケ所にあり、形象埴輪群を区切るよう南北一列に並んでいました。西側調査区では馬などの四足動物が2列縦隊となって西側へ続き、ぞの内側では水鳥形もみつかっています。
 内堤は当時の地表に直接盛土をおこなっていました。内堤の北辺から南へ向かって約1.3mの厚さに礫土を盛り、整形しています。埴輪祭祀区のための張出は内堤の北斜面の形状を整えた後に盛土していました。
土層断面の観察では内濠斜面及び外濠に腐植土や堆積土などが認められないことから、張出の造成に際しては地山を掘り込んだ外濠南辺部に粘質土を水平に積み上げたものと判断され、表面は化粧土として均質な砂質土を盛って仕上げていました。
 溝は2条あり、いずれも後世に掘削されたものです。溝2は5次調査区から東西に続く幅0.4…0.8m、深さ0.6mの溝で内堤北縁を蛇行ぎみに延びています。溝3は東調査区検出の南北溝です。幅3m、深さ0.2mで円筒埴輪列と形象埴輪群を掘りこみ、西側に盛られた排土が土塁状となっていました。
<造出>
 調査前の形状は前方部のつけ根から北へ突きだしていましたが、盛土の状況を確認するために断ち割ったところ、地表下4.2mで内濠底と造出基底部を検出し、2次的に移動した盛土によって形成されていたことが判明しました。造出はやや前方部寄りに位置し、内濠部の現地表下2.9mで濠底となります。濠底での基底部裾幅は東西35mをはかり裾部は直線で前方部裾と平行につくられていました。
後円部との境は幅約1.5〜2mの溝状となり、濠底はくぴれ部にむかって緩やかに上がっていました。
 遺物については
円筒埴輪と須恵器、木製品などがあります。埴輪はすべてを円筒が占め、形象埴輪はみつかりませんでした。須恵器は杯・甕・器台などがあり、いずれも小片となっていました。木製品はいずれも内濠底から出土しました。総数12点のうちなどの掘削具が2点あるほか、杭やザル状の木製品などがあります。

3.調査でわかったこと

 調査では今城塚古墳の規模や構造、祭祀について新たな資料を得ることができました。張出は内堤本体とは築造の工程や盛土の方法が異なっていること、祭祀区の東西長が62〜65mを測ることが判明しました。ここには家・器財・人物・動物などの形象埴輪が計画的に配置され、柵形を並べることによって区画していました。第5次調査検出の形象埴輪の配列とあわせて、家形15点、柵形25点、蓋形4点、大刀形14点、盾形16点、靭形1点、武人形2点、鷹匠形2点、力士形2点、冠帽男子1点、座像男子4点、巫女形7点、四足動物(馬形)18点、鶏形4点、水鳥形13点の合計113点となります。これらの配列状況からは、柵形による幅7〜10mの区画が5ケ所確認できます。区画ごとに家・巫女・武人・動物などの配置に特徴的なものがあり、それぞれがその内容に即した埴輪祭りを表現していると考えられます。
 いっぽう、造出周辺では円筒埴輪
と土器(須恵器)のみの出土で、形象埴輪による祭祀はすでにおこなわれていないことがうかがえます。この造出と内堤の2ケ所の祭祀区画での調査成果は、今後大王陵級の古墳における祭祀の実態とその変遷をうかがううえで非常に重要な資料になると考えられます。

【追記】
 平成12年度に実施した第3次規模確認調査で出土した鉄製品の保存処理を進めていたところ、4点の刀装具片に龍文銀象嵌資料が確認されました。うち1点は龍文と勾玉文等を組み合わせた珍しいものです。

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