見野群集墳 第1次発掘調査 発掘調査現地説明会

見野群集墳 第1次発掘調査

平成18年9月3日(日曜日)
姫路市埋蔵文化財センター
立命館大学文学部日本史学専攻考古学コース

立命館大学文学部では、学芸員課程の実習の一環として夏季発掘調査を毎年実施してきました。昨年度からは姫路市域の調査を姫路市教育委員会のご支援により姫路市埋蔵文化財センターと共同で行なっており、宮山古墳・見野群集墳の測量調査により、古墳及びその周囲の詳細な地形図を作成いたしました。そして今年度は、見野群集墳の発掘調査を行うこととなりました。

見野群集墳は姫路市四郷町見野に所在する古墳時代後・終末期の古墳群です。2004年3月31日に兵庫県教育委員会から刊行された『兵庫県遺跡地図』には10基の古墳が登録されています。これまで周辺地域の詳細な分布調査は行われていませんでしたが、近年の見野古墳群保存会の努力により、古墳の分布域が明らかにされつつあります。現在確認されている10数基の中には、巨石を用いて横穴式石室が構築されている10号墳や1つの墳丘に2つの並列した石室を持つ6号墳など特徴のある古墳が存在しています。2006年3月には姫路市指定重要有形文化財(史跡)として登録されました。これまで発掘調査は行われておらず、副葬品などの遺物も見つかっていません。今回の調査では、3号墳及び6号墳の調査を行いました。

3号墳では、横穴式石室の調査を行いました。石室の全長が11mを越えており、相当の規模を有する主体部であることが判明しています。調査前の想定よりもかなり大きな石室であったため、現在のところ石室構築時の床面には到達できていませんが、石室の羨道及び前庭部からは7世紀の前半に位置づけられる須恵器(杯身・短頸壷・平瓶)や装身具(銀耳環)が出土しています。

6号墳は、1つの墳丘に2つの並列した石室を持つという特徴のある古墳です。今回は、東西の横穴式石室及び墳丘の調査を行いました。墳丘は現在調査中で、墳形や規模はわかっていませんが、盛り土の単位を一部で確認することができています。東石室は現状で全長約9.5m、幅約1.5mを測る無袖の石室で、床面には河原石が敷き詰めてありました。石室内からは、須恵器(杯身・杯蓋・高杯・提瓶)、装身具(金耳環・銀耳環・管玉・小玉)、武器(刀剣・鉄鉱)、馬具(轡)が出土しています。また、石室内の南西部には箱式石棺が据えられています。西石室は、全長約8.4m、幅約1.5mを測る無袖の石室で、石室内に箱式石棺が2基据えられていたことがわかっています。石室内からは、須恵器(杯身・杯蓋・高杯・提瓶・平瓶)、土師器、装身具(管玉)が出土しています。墳丘には、どちらかの石室を後から掘削して構築したような痕跡は現在のところ認められませんし、2つの石室の遺物はどちらも6世紀末から7世紀初頭に位置づけられるもので、大きな時期差はないようです。2石室は、今のところ同時に構築されたと考えています。

3号墳の石室は姫路市域でも有数の規模であり、往時の被葬者の勢力が相当のものであったと推定されます。また、全国的に見ても珍しい6号墳の並列する2石室の内容が明らかになったことで、その被葬者像に迫ることができるのではないかと考えられます。

図1 見野群集墳位置図
図1 見野群集墳位置図(1/25,000)

図2 見野群集墳分布図
図2 見野群集墳分布図(1/500)