長岡京跡右京第988次・伊賀寺遺跡

はじめに

今回の調査は、京都第二外環状道路建設に先立って実施しました。調査地は、長岡京市下海印寺下内田に所在し、長岡京跡の南西部にあたります。また、縄文時代から中世にかけての集落跡である、伊賀寺遺跡に含まれています。遺跡は、小泉川に接する一段高い微高地上に立地しています。

伊賀寺遺跡ではこれまでの調査で、縄文時代中期の石囲炉をもつ竪穴式住居跡や、後期の火葬基などの遺構がみつかっており、縄文時代中期及び後期の集落が広がっていたことが明らかになっています。

また、平成21年度の（財）長岡京市埋蔵文化財センターによる発掘調査では、縄文時代の玉作り関連遺物が多く出土しました。

今回の調査成果

(1)縄文時代中期（約4,500年前頃）

竪穴式住居跡5基と土壙墓（どこうぼ）3基を検出しました。いずれも北白川C式と呼ばれる土器が使われた時期のものです。竪穴式住居跡の内、4基からは炉跡と考えられる焼けた部分が見つかりました。

竪穴式住居跡1は、1辺が7mを測る大型の竪穴式住居跡です。この竪穴式住居跡のくぼみは住居が使われなくなった後にゴミ捨て場として用いられました。そのため内部からは多くの縄文土器や石器が出土しました。

第1図　調査地位置図（国土地理院1／25,000京都西南部・淀）

土壙墓はすべて楕円の平面形を持つ穴で、内部に人頭大の石がつめられたものもありました。

1地区の南部や、これまでの隣接調査地区でも多くの柱穴が見つかっていることから、検出した以上の竪穴式住居跡があったものと想定できます。

(2)縄文時代後期（約3,500年前頃）

土坑3基、埋め甕1基を検出しました。出土した縄文土器から元住吉山式土器（後期中葉）と宮滝式（みやたきしき）土器（後期後葉）の2つの時期のものがあります。土坑8は、1辺3m四方の隅丸方形の平面形を持つ穴で、中からは細片化した骨が出土しました。近くでは昨年度の調査で火葬墓が見つかっており、この土坑も同様の遺構である可能性もあります。

埋め甕は、小型の深鉢形土器の口を石と土器の破片で蓋をしていました。幼児や胎児などを埋葬したものである可能性があります。

土坑1からは宮滝式土器が出土しました。この時期の遺構は、これまで伊賀寺遺跡では確認されておらず、最も新しい時期の遺構となります。

これら以外に、2基の竪穴式住居跡がありますが、現段階では時期を確定できていません。

これまでの調査でわかったこと

1. 伊賀寺遺跡での縄文時代の竪穴式住居跡はこれまでの調査を合わせ、21基検出できました。そのうち中期のものが9基、後期のものが10基です。中期と後期では、違った場所に住居を営んでいたことがわかりました。
2. お墓と考えられる土壙墓なども検出しましたが、縄文時代中期のものは平面楕円形で骨などは検出できませんでした。後期のものは大型の方形土壙に細片化した火葬骨の入ったもの、楕円形で火葬骨の入ったもの、楕円形で骨の残されていないものなどがありました。時期によって埋葬の方法が異なっていることが分かりました。
3. 後世の洪水による破壊のため遺構が削られていることが分かり、川のすぐ近くまで縄文時代の集落が広がっていたことがわかりました。

	年代	西暦	調査で分かったこと	主な出来事	関連遺跡
縄文時代	草創期	（紀元前12,000年頃）	この地に人が住み始める	土器を使い始める
	早期
	前期
	中期	（紀元前3,000〜2,500年頃）			長岡京市友岡遺跡
		（紀元前2,500〜2,000年頃）	1地区に人が住む （竪穴式住居跡）		大山崎町脇山遺跡
	後期	（紀元前1,800年頃）			長岡京市井ノ内遺跡
		（紀元前1,500年頃）	2地区に人が住む（火葬墓）
	晩期	（紀元前1,000年頃）			京都市上里遺跡
弥生時代	前期			稲作が列島に広まる

北白川C式土器

京都市左京区の北白川追分町遺跡出土遺物を基に設定された縄文時代中期末の土器

元住吉山式（もとすみやましき）土器

神戸市にある元住吉山遺跡出土土器を基に設定された縄文時代後期中葉の土器

宮滝式（みやたきしき）土器

奈良県吉野町にある宮滝遺跡出土土器を基に設定された縄文時代後期後葉の土器