寺戸大塚古墳 現地説明会 資料

2012年(平成24年)9月22日(土)
財団法人 京都市埋蔵文化財研究所

説明文

遺跡名寺戸大塚古墳
調査地京都市市西京区大枝南福西二丁目ほか
調査期間平成24年7月〜9月末(予定)

1.はじめに

寺戸大塚古墳は、京都市西京区大枝南福西二丁目と向日市寺戸町芝山にまたがる、全長98mの前方後円墳です。同じ丘陵上に立地する五塚原古墳〔全長91m・前方後円墳〕、元稲荷古墳〔全長92m・前方後方墳〕、妙見山古墳〔全長114m・前方後円墳〕とともに古墳時代前期(3世紀中頃〜4世紀中頃)に築造された乙訓地域の首長墳として位置づけられています。寺戸大塚古墳はこれまでに計10回にわたる調査が実施され、後円部3段、前方部2段の前方後円墳であることが明らかにされています。

京都市では、国庫補助事業として、古墳の保存を図るために計4回の発掘調査を実施し(平成18・20・21・今年度)、今年度の調査では、古墳の平面形態や構造を復元するための貴重な成果が得られました。

2.調査成果

寺戸大塚古墳調査区配置図
図1 寺戸大塚古墳調査区配置図

後円部(1トレンチ)

1トレンチでは墳丘裾平坦面、第1段斜面を検出しました。

第1段斜面の裾部には葺石が良好な状態で残存していました。葺石の葺き方として、人頭大ほどの大ぶりの石が基底石として長軸を横方向にして据え付けられ、その上に拳大の礫を下から上に葺き上げていることがわかりました。葺石の裏込め土には径5cm程度の小礫が多く含まれています。基底石のすぐ外側には樹立された円筒埴輪列が確認されました。おおむね3mごとに配置された円筒埴輪が5基検出されています。

モノクロ写真
1トレンチ 後円部裾、葺石・埴輪列検出状況(北西から)

前方部(2〜4トレンチ)

2トレンチでは墳丘裾平坦面、第1段斜面、第1段平坦面、第2段斜面を検出しました。第1段斜面の裾部では葺石、第1段平坦面では礫敷きの施工を確認できました。

第1段斜面の葺石は、後円部(1トレンチ)の葺石に比べると、使用した石材の種類や大きさ、葺き方はおおむね共通しますが、裏込め土に小礫がほとんど含まれていない点が異なります。第1段平坦面には葺石よりも小さい円形の礫が敷かれています。

2〜4トレンチの調査を通して、前方部西斜面の墳丘裾ラインは北から南に向かって外側に広がることがわかりました。

モノクロ写真
3トレンチ 前方部裾、ずれた葺石と埴輪検出状況(西から)

3.まとめ

これまでに公表されていた墳丘測量図から、寺戸大塚古墳は前方部の両側辺が外側に開かずに墳丘の主軸にほぼ平行する「柄鏡形」の前方後円墳として理解されていましたが、調査の結果、前方部の西側辺が外側に開くことが判明し、「柄鏡形」の前方後円墳ではないことが明らかなった点は新たな成果と言えます。

今後は、埴輪や過去の調査で出土した副葬品などの出土遣物を含めて、寺戸大塚古墳の築造背景を探っていく必要があります。

図2 乙訓における首長墳の分布図

図2 乙訓における首長墳の分布図

図3 乙訓における首長墳の変遷図

図3 乙訓における首長墳の変遷図

図4/5 復元図

図4 従来の寺戸大塚古墳の復元図(『向日丘陵の前期古墳』より)
図4 従来の寺戸大塚古墳の復元図(『向日丘陵の前期古墳』より)
図5 今回の調査によって明らかとなった寺戸大塚古墳の復元図
図5 今回の調査によって明らかとなった寺戸大塚古墳の復元図

図6 前方後円墳模式図

図6 前方後円墳模式図

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