- 開催日
- 2018年(平成30年)3月3日(土)
- 調査機関
- 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所 都城発掘調査部
藤原宮大極殿院の調査 飛鳥藤原第195次調査 資料
2018年3月3日
独立行政法人 国立文化財機構
奈良文化財研究所 都城発掘調査部
大極殿院東面・北面回廊にかかる東北隅部を発掘調査しました。東面・北面回廊の礎石据付痕跡を確認し、これまで不明であった東面回廊北半部と北面回廊の構造を考える上で、重要な知見を得ました。また、大極殿院回廊東北入隅部の柱位置が確認できたため、大極殿院回廊の南北規模が確定でき、造営時の様子についても新たなことがわかりました。
1.調査の経緯と目的
藤原宮は、694年から710年まで営まれた宮殿です。藤原宮の中心部に位置する大極殿院は、回廊で囲まれた東西約120m、南北約170mの空間です。大極殿院回廊の調査は、戦前の日本古文化研究所の調査(1934・1935年)に始まり、戦後は奈良文化財研究所が継続的に調査を進めてきました。その結果、回廊は礎石建ちで瓦葺きの複廊であることが判明しました。しかし、回廊北半についてはこれまで面的な調査はされておらず、回廊南半と同様の構造であるかは不明でありました。そこで、今回、その解明のため、大極殿院東北隅部の調査を行うこととなりました。
2.調査の成果
東面回廊
礎石の据付痕跡を6ヵ所確認しました。西側柱筋にあたる位置にも痕跡を確認できたため、東面回廊北半 も複廊であったと考えられます。桁行の柱間寸法は、北端部が約3.8m(13尺)、その南は約4.1m(14尺)、梁行は約2.9m(10尺)とみられます。回廊基壇は、版築状に積み土を行い造成しています。
北面回廊
礎石の据付痕跡を11ヵ所確認しました。北側柱筋の遺存状況は良くなく、調査区北端で根石由来と考えられる玉石の広がりを確認するのみでした。玉石の広がりは北側柱推定位置にあることから、北面回廊も複廊であった可能性は高いといえます。柱間寸法は、桁行約4.1m(14尺)、梁行約2.9m(10尺)に復原できます。
L字溝
回廊造営時に、東面・北面回廊沿いにL字状に溝が掘られていることがわかりました。雨水排水のため、回廊基壇の高まりと一体的に溝が掘削されたとみられます。
3.まとめ
今回の調査で、東面回廊は北半も複廊であり、北面回廊も複廊の可能性が高いことがわかりました。また、大極殿院東北入隅部の柱位置を確認できたことから、東南入隅柱から東北入隅柱まで約152.3mの規模になることがわかりました。
さらに、L字溝の検出や整地の状況など、造営時の様子についても興味深い知見が得られました。
遺構の写真
画像を拡大表示した後は、キーボードの左右矢印キーで画像を切り替えられます。
OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZで撮影