千提寺菱ヶ谷遺跡(第6次) 現地説明会

開催日
2018年(平成30年)8月18日(土)
調査機関
茨木市教育委員会

千提寺菱ヶ谷遺跡 資料

2018年8月18日

【調査概要】

調査地 大阪府茨木市大字千提寺36番8
調査期間 平成30年5月下旬〜8月末(予定)
調査機関 茨木市教育委員会教育総務部歴史文化財課

調査の経緯

 今回の調査地である千提寺は、茨木市の北部に位置しています。茨木市教育委員会では、千提寺地区の小字菱ヶ谷における埋蔵文化財の有無を確認するため、平成26年度に試掘調査を実施しました。東西南北にのびる尾根筋に沿って「十字」状の試掘トレンチを設定し調査したところ、20基以上の遺構いこうを確認しました。この結果を受けて、調査した一帯は「千提寺菱ヶ谷せんだいじひしがたに遺跡」と名付けられました。引き続き、同年の平成26年度末に第一次調査、翌平成27年度に第二次調査を実施し、江戸時代に埋葬された頭蓋骨と歯だけが残っていた墓(お墓1)や、南斜面を切り出してテラス状の平坦面を造った痕跡こんせきを確認しました。続く第三次調査でも、炭焼きの穴と思われる炭化物埋納土坑たんかぶつまいのうどこうや、石を加工する採石場の痕跡と思われる礎集積土坑れきしゅうせきどこうが見つかりました。その後も調査を継続し、平成29年度の第五次調査では人骨が納められた墓(お墓2)の一部分を、今回の第六次調査ではその残りの部分を確認し、1体分と思われる骨が残っていることを確認しました。発掘されたばかりの状態です。ぜひご覧になってください。

調査地の位置と周辺の遺跡
4トレンチ:第二次調査でみつかったお墓1 の近辺を詳しく調査すると、お墓1から約4m南の地点で、ほぽ1体分の骨が残っている穴が新たにみつかりました。〔お墓2)。頭蓋骨だけ残っていたお墓1とくらべ、お墓2には多くの骨が残っています。特に頭部はアゴの骨も残っており、今後は科学分析にかけて性別や年齢、時代などの詳細を調べます。3トレンチ:千提寺菱ヶ谷遺跡の範囲を調べるために設定しました。主に燃えカスが多く入り、火を受けた痕跡がみられる穴を調査しています(炭化物埋納土坑)。穴の中に燃えカスがたくさん入っています。他の炭化物埋納土坑では、科学分析の結果、クリを燃やしていたことがわかりました。クリを使用した炭焼きの痕跡と考えられます。

これまでの調査の概要

①お墓

 標高約310mの平坦部で、2つみつかりました。墓穴はかあなの形は、四方の角が丸みをおびた1.6m x 0.9mほどの長方形です。お墓1からは頭蓋骨の一部・下顎あごの骨・21本の歯がみつかり、科学分析の結果、何らかの疾病しっぺいを患った熟年男性で、江戸時代前期以降に出生した人物であることがわかりました。お墓2では、およそ1体分の骨がみつかりました。特に頭部は良好な状態で残っていました。今後、この骨を科学分析にかけ、埋葬者の性別や年齢・出生年代などの詳細を調べます。

炭化物埋納土坑たんかぶつまいのうどこう

 これまで、計3つを確認し、今回みつかったもの以外は急斜面上につくられていました。土坑は径約80cmの円形で、中に1〜2cm大の炭化物を多く含んでいました。第三次調査でみつかった土坑の土や炭化物を分析にかけた結果、この穴は約800年前の中世(鎌倉時代)につくられ、炭化物はすべてクリであることがわかりました。クリ炭は火付きがよい柔らかい炭です。当時はクリ林が広がり、この場で炭作りをしていた可能性があります。

まとめ

 今回、千提寺菱ヶ谷遺跡における第六次調査で、ほぼ1体分の骨が残っているお墓と炭化物たんかぶつを多く含む穴がみつかりました。お墓2で、みつかった骨の詳細は科学分析の結果が出てからとなりますが、隣のお墓1の埋葬者と関係があるのかどうかも気になるところです。これまでの調査の結果を合わせて考えると、土器などの遺物はほとんど出土せず詳細は不明ですが、中世は炭焼きなどを行う場、近世は採石場や墓地として利用されていたようです。以上のことから、当地においては中世に土地利用がはじまり、その後は時代によって利用目的が変わっていったことが見えてきました。

茨木市教育委員会教育総務部歴史文化財課
〒567-8505 大阪府茨木市駅前三丁目8番13号
TEL.(072) 620-1686 歴史文化財課(直通)
FAX. (072) 620-6100
Mail. rekibun[at]city.ibaraki.lg.jp
平成30年8月18日印刷・発行

遺構の写真

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説明ビデオ

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