- 現地説明会日時
- 2022年(令和4年)8月6日(土)
- 調査機関
- 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所 都城発掘調査部
- 現地見学会資料
- 全国遺跡報告総覧
藤原宮大極殿院北部を調査し、大極殿後方基壇および大極殿後方西回廊を検出しました。大極殿後方基壇の上には東西棟の建物が存在したと考えられ、その東西に後方回廊が取り付く構造を復元できます。これらの機能に関する手がかりは得られていませんが、復元される建物規模や大極殿との位置関係から、大極殿後殿とそこに接続する軒廊と考えられます。古代日本の宮都構造の変遷を考える上で、重要な成果です。
大極殿院は藤原宮の中心部に位置し、その中央には即位や元日朝賀などの儀式に際して天皇が出御する大極殿があります。大極殿院の調査は、1934年の日本古文化研究所の調査に始まり、1977年以降は奈良文化財研究所が継続的に調査を進めてきました。2019年には大極殿後方東回廊を発見し、2021年には大極殿の後方で基壇を発見しました。今回は、大極殿後方基壇と後方西回廊の規模と構造、そして、これらの造営過程の解明を目的として、大極殿院北部の調査をおこないました。大極殿後方基壇 大極殿後方基壇を東西約14.0m分、南北約15.0m分検出しました。基壇周囲の溝から復元される大極殿後方基壇は、東西約50m、南北約16m、東西端で回廊基壇に接続し、南北に約3mずつ張り出す構造をとります。基壇上には大極殿後方回廊より梁行の大きい東西棟の建物が存在したと考えられます。復元される建物の平面規模や大極殿との位置関係から、大極殿後殿とみることができます。
大極殿後方西回廊
礎石据付痕跡を梁行1間分、合計2基検出しました。礎石は抜き取られており、据付穴と根石が残存します。大極殿後方東回廊と同様、桁行約4.1m(14尺)等間、梁行約2.9m(10尺)等間、礎石建ち、瓦葺きの複廊と考えられます。大極殿後殿に接続する軒廊として理解できます。
基壇外装
大極殿後方基壇と後方西回廊基壇の周囲で、基壇外装の痕跡を検出しました。二上山産出の凝灰角礫岩を多く含んでいます。
礫敷
大極殿院内庭の整備にともなう礫敷を検出しました。拳大の礫を用いており、上面には藤原宮廃絶時に廃棄された瓦が堆積しています。
基壇周囲の溝
大極殿後方基壇および後方西回廊基壇の周囲で、基壇造成時に掘られた排水溝(東西溝1〜3、南北溝1)を検出しました。
掘立柱塀
東西方向の掘立柱列のうち、2基の柱穴を再検出しました。大極殿後方基壇と後方回廊の造営中、大極殿院の北部を一時的に区画した掘立柱塀と考えられます。
足場穴
大極殿後方西回廊周辺で、直径約0.2mの小穴を4基検出しました。大極殿後方西回廊の造営にともなう足場穴とみられます。
瓦敷
幅約0.9mの東西方向の瓦堆積を、約4.8m分検出しました。藤原宮廃絶後の土地利用の中で、人為的に敷かれたものとみられます。
現場写真
OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZで撮影
発掘現場ビデオ
OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZで撮影