- 現地説明会日時
- 2023年(令和5年)1月28日(土)、29日(日)
- 調査機関
- 奈良市教育委員会文化財課埋蔵文化財調査センター
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2023年1月の報道発表資料 | 奈良市HP | - |
はじめに
富雄丸山古墳は、1972年に奈良県教育委員会が発掘調査を実施し、墳頂部に粘土槨(埋葬施設)のある大型円墳であることが判明しました。明治時代に盗掘された副葬品は、現在京都国立博物館に所蔵され重要文化財に指定されています。奈良市教育委員会では2017年度に航空レーザ測量(第1次調査)、2018年度から発掘調査を行い、直径109mの造出し付円墳(日本最大の円墳)であることがわかりました。
発掘調査成果
造出しの調査
F 発掘区
長さ約7.4m、幅約3m、深さ約1mの長方形を呈する墓坑内で長さ約6.4m、幅約1. 2mの粘土槨(埋葬施設)を確認しました。造出し上面の礫敷を埋めた面から墓坑が掘り込まれており、墓坑を埋めた後に円丘部2段目斜面を完成させています。そのため、築造当初は計画されていなかったものの、古墳が完成するまでの間に埋葬施設を作るよう計画変更が行われたとみられます。
粘土槨内部には、コウヤマキで作られた割竹形木棺が残存しています。棺身は、墓坑底を一段深く掘りくぼめた部分に設置されているとみられ、棺蓋をのせる位置の約30cm外側の範囲を粘土と砂で薄く整地しています。
円丘部側の被覆粘土中には、鼉龍文盾形銅鏡1面と蛇行剣1本が副葬されていました。鼉龍文盾形銅鏡は長さ約64cm、幅約31cmで蒲鉾状に棺蓋を覆う被覆粘土の形状に合わせて斜めに立てかけられていました。背面中央に紐があり、その上下には倭鏡に認められる鼉龍鏡の図像文様が確認できます。ほかにも鋸歯文を中心とする文様があり、類例のない銅鏡です。表面が平滑に研磨されており、倭鏡工人が製作したとみられます。
鼉龍文盾形銅鏡をブロック状の粘土で埋めてその上に水平面を作り出し、長さ約267cmの蛇行剣が副葬されていました。日本最大の鉄剣でもあり、蛇行剣としては最古例です。刃部幅は約6cmですが、蛇行しているため部分的に残存する鞘の幅は復元で約9cmあります。柄頭・柄口・鞘口・鞘尻には有機質の装具痕跡が残存していました。
円丘部の調査
A 発掘区
南拡張区墳頂部に壇状の遺構があるかを確認するために設定しましたが、確認できませんでした。
U 発掘区
第5次調脊で一部を確認した湧水施設形埴輪を伴う遺構の再確認を行いました。その結果、埴輪を設置した高まりは2段目斜面に取り付くことがわかり、南東側を溝で区画していることがわかりました。
V 発掘区
3段目斜面の葺石は流出していましたが、2段目平坦面の小礫敷が残存していました。また、3段目裾から約4mの位置で円筒埴輪列を確認し、2段目埴輪列が一周めぐっていたことがわかりました。
W·X·Y 発掘区
W 発掘区では2段目が崩れて埴輪列等が確認できませんでした。X 発掘区では1段目平坦面の埴輪列を確認し、Y 発掘区では概ね想定位置で古墳の裾を確認しました。
2・3号墳の調査
富雄丸山古墳の北東側隣接地には、1972年に奈良県の発掘調査で確認された富雄丸山2・3号墳があります。2号墳は横穴式石室をもつ6世紀後半の円墳、3号墳は浬葬施設が確認されず不明確でした。奈良市が実施した航空レーザ測量では、2・3号墳が連結するひとつの前方後円墳にもみえることから、旧発掘区の再調査を行いました。その結果、両古墳の間を区画する溝がないこと、3号墳は盛土があるものの埋葬施設がないことが判明しました。測量成果をふまえれば、2号墳が後円部、3号墳が前方部となる前方後円墳である可能性があります。
発掘調査体験 × 学生との協働調査
約334名の参加を得て発掘調査体験を実施したほか、包括連携協定に基づく奈良大学生、東京・筑波・大阪・京都府立・龍谷大学で古墳研究を行う大学生と協働して発掘調査を実施しました。
展示遺物
OLYMPUS E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZで撮影
発掘現場写真
OLYMPUS E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZで撮影
2号墳・3号墳
OLYMPUS E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZで撮影