巨大窯発見!
古代では日太最大
兵庫県教育委員会では、今年の8月から神戸市西区神出(かんで)町で、国道175号神出バイパス建設に伴い発掘調査をおこなっています。この辺り一帯は、神出古窯址群(かんでこようしぐん)と呼ばれ、平安時代〜鎌倉時代の須恵器や瓦の一大生産地であることが知られています。
今回の調査では、長さ13m、幅3mの大きな窯がみつかりました。大窯の規模は、古代の須恵器窯としては、日本最大級です。また、神出古窯址群中、最古の窯も発見され、同古窯址群のルーツをたどる大きな手がかりとなります。
神出古窯跡群とは
神戸市西区神出町に所在する平安時代から鎌倉時代の須恵器古窯址群で、総数は、100基以上と考えられており、備前焼・丹波焼などの中世六古窯とともに、我が国の中世窯業を代表する生産の一つです。院政期(1088〜1179)に京都の平安京の中にあった鳥羽離宮や尊勝寺などの寺院の屋根瓦の生産を行い、また、こね鉢を中心とした土器類は海運等を利用して全国に流通していたことがわかっています。
神出最古の窯 発見! 神出鴨谷1号窯
鴨谷(かもだに)1号窯は、全長5.8m、幅1.2mの地上式の窯です。この窯では、椀・壺などが焼かれていました。この窯は土器から、9世紀代の窯であることがわかっています。
今までの調査から、神出古窯址群は、11世紀半ばから生産が始まると考えられていました。しかし、鴨谷1号窯が9世紀の窯であることから神出古窯址群の始まりが9世紀代にまでさかのぼることが判明しました。
日本最大級の窯現る! 神出鴨谷2号窯
鴨谷2号窯は、全長13m前後、幅3mの地上式の穴窯です。この窯では、椀・壺の他に、瓦や大型甕が焼かれていました。みつかった土器からこの窯は、11世紀代中頃の窯と推定されています。
この窯は、古代の須恵器窯の中では、日本最大級です。窯の長さもさることながら、窯の規模を大きくしているのは、横幅の広さです。この時期の窯の一般的な幅は、2mほどであり、幅が広くなると、天井を構築するのが難しく、また、窯の操業中に落盤の危険性があります。このような大きな窯であれば、窯の中心部などに桂や壁を設けて天井を支える事が必要と考えられますが、この鴨谷2号窯は、そのような痕跡はなく、すでに、この時期に後の中世六古窯(ちゆうせいろくこよう)に見られるような大窯の技術があったことがうかがわれます。
大甕専用の窯? 神出鴨谷3号窯
鴨谷3号窯は、全長4m(残存長)、幅2.4mの地上式の窯です。この窯では、大型の甕が大量に焼かれていました。みつかった土器からこの窯は、11世紀代の窯と堆定しています。
この窯も、2号窯同様、横幅の広い窯です。みつかった時にはすでに、一部しか残っていませんでしたが、実際は、2号窯と同様の規模と考えられます。
大型窯の比較
窯跡名
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時期
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全長
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幅
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備考
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神出鴨谷(かもだに)2号窯 |
11世紀 |
13m前後 |
3.Om |
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神出鴨谷(かもだに)3号窯 |
11世紀 |
4m(残存長) |
2.4m以上 |
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神出梟谷(ふくろうだに)1号窯 |
11世紀 |
推定14m |
3m |
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神出万堡池(まんぽいけ)1号窯 |
11世紀 |
7m以上 |
3m |
未調査 |
石川県法住寺窯(珠洲焼窯) |
14世紀 |
9m以上 |
3.6m |
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岡山県山崎窯 (備前焼窯) |
14世紀 |
推定20m |
2.1〜2.5m |
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岡山県不老山東口窯(備前焼窯) |
15世紀 |
推定40m |
3.2〜3.4m |
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大阪府陶器山206号窯(須恵器窯) |
古墳時代 |
9m以上1 |
3.2m |
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大阪府陶器山5号窯(須恵器窯) |
古墳時代 |
15m以上 |
3.1m |
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神戸市西区
神出古窯址群現地説明会資料
2002年11月16日(土)
兵庫県教育委員会
埋蔵文化財調査事務所
〒 652-0032
神戸市兵庫区荒田町2 -1- 5
TEL 078-531-7011
ホームページアドレス
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