鬼虎川遺跡 第58次発掘調査

鬼虎川遺跡 第58次発掘調査 現地説明会資料

2004年4月17日(土)
東大阪市教育委員会

<土偶>

本遺跡においては、第42次調査で縄文時代晩期末のものと思われる土偶(小型の立体的な体部)が1点出土しています。

今回の土偶は弥生時代中期中葉に形成された土坑(土坑43)内より出土しました。頭部(人面)のみ。幅9.6cm、高さ7.4cm、厚さ2.1cmを計る横長の板状で、オリーブ灰色を呈し、地元(生駒西麓)の土で作られています。
頸部以下は、右側のみ頸のくぼみと肩への広がりがみられます。欠損しているため原型は不明ですが、形状からいわゆる「台式土偶」であろうと考えられます。眉・目部および鼻は貼り付けて十字状に隆起させ、両眼は細く沈線で、両鼻孔も刺突して小さく浅く施しています。額部の両眉上にそれぞれ2個の突起があり(計4つ一左側は欠損し不明瞭)、口は丸くボール状に窪め、両耳部には貫通した円孔があります。裏面は上部に突起状の貼付があったようですが不明です。下部には数条の不揃いの円弧状沈線と、刺突文が施されています。

この土偶の特徴である眉・目と鼻部を隆起させる土偶は、時期と近隣の遺跡例からその系統を見てみますと、縄文時代後期の縄手遺跡、晩期の日下遺跡、鬼塚遺跡、晩期末の宮ノ下達跡(隆起部T字)とあり、さらに両耳部附近に円孔を施しているものとしては奈良県の橿原遺跡のもの(隆起部T字と十字)があります。また、大型化し、隆起部が十字でより類似したものは久宝寺遺跡から出土しており、弥生時代前期から中期の間のものといわれています。今回のものは、久宝寺遺跡のものに比べ、耳の突出がなく、頭端部の飾りもないなど、やや退化しさらに大型化したもので、形態からも、遺構状況・共伴遺物からも中期におさまるものと考えられます。

土坑43出土

展示品

正面写真

下からの写真

上からの写真

系統・類似土偶図

土偶イラスト

縄手(縄文後期)

土偶イラスト

日下(縄文晩期)

土偶イラスト

鬼塚(縄文晩期)

土偶イラスト

橿原(縄文晩期)

土偶イラスト

久宝寺(弥生前・中)

台式土偶の例-実測図は約3分の1-

土偶のイラスト

鬼虎川42次出土

土偶のイラスト

宮ノ下(縄文晩期末)