- 現地説明会日時
- 2023年(令和5年)9月16日(土)
- 調査機関
- 城陽市教育委員会
- 調査協力
- 大阪公立大学、立命館大学
1. ごあいさつ
久津川車塚 は、5世紀前半に築造された山城地域最大級の前方後円墳です(墳丘長推定175m)。これまで、城陽市教育委員会では史跡整備に伴い、古墳の規模・形態や墳丘構造を明らかにするための調査を行なってきました。2013年度から測量調査を行い、2014年度からは発掘調査を進めています。2014-2016年度調査は西造り出しの調査、2017-2018年度は後円部北西側の渡り土手の調査、2019年度は後円部北側の調査、2020年度は前方部西側面の調査、2021年度は前方部南側および東くびれ部の調査を行いました。また、昨年度より後円部東側の墳丘および外堤の調査を行なっています。
今年度は墳丘東側の造り出しおよび後円部の様相を明らかにするため、後円部東側に2つの調査区(1・2トレンチ)、造り出し想定位置に2つの調査区(3・4トレンチ)を設定しています。
2. 調査成果
(1) 23-1 トレンチ
中段斜面、下段テラス、下段斜面を検出しました。
中段斜面では基底石を6個検出しました。基底石は良好に遺存しており、30~35cmの石を長手積みで積んでいます。
下段テラスでは礫敷と埴輪列を検出しました。下段テラスの長さは5.2mを測ります。礫敷は攪乱部分を除き、良好に遺存しており 3~10cmの礫を使用しています。埴輪列では、5本分(北から3本目は抜き取り)の埴輪を検出しました。北から2本目と4本目の個体は、直径約30cmを測ります。また、北から1本目の個体には、赤色顔料が塗布されています。
下段斜面では残存する葺石と墳丘面の一部を検出しました。葺石には15~20cmの石を使用しています。22-4トレンチ成果と合わせると、下段斜面の長さは6.5m、傾斜角は23.7度に復元できます。出土遺物は、円筒・朝顔形埴輪片です。これらは墳丘から転落したものと考えられます。また、洪水堆積層から後世の須恵器片(甕)が出士しています。
(2) 23-2トレンチ
下段テラス、下段斜面、墳丘裾部を検出しました。
下段テラスでは礫敷と6本分の埴輪列を検出しました。磯敷は埴輪列の西側で良好に遺存しており、2~8cmの礫を使用しています。また、埴輪列では直径32cmの輪を5本分、直径34cmの埴輪を1本分検出しました。直径34cmの埴輪(北から4本目)は赤色顔料を塗布しています。周辺から朝顔形埴輪の片がまとまって出士していることから朝顔形埴輪であると考えられます。
下段斜面では葺石の遺存状況は良好で、石列、充填石を検出しました。下段斜面の長さは7.0mを測ります。石列には25~30cmの石を使用し長手積みで積んでいます。また、充填石には15~25cmの石を使用しています。墳丘裾部では、標高29.0mの地点で傾斜変換点を確認しました。しかし、昨年度調査(22-4トレンチ)と同様に傾斜変換点では基底石を確認することができませんでした。こうした昨年度の調査成果と、斜面裾部を除き葺石が良好に遺存している状況から、削り出した墳丘裾部より少し高い位置から葺石を斜面に施していた可能性が考えられます。
出土遺物は円筒・朝顔形埴輸片です。これらは墳丘から転落したものと考えられます。また、洪水堆積層から後世の須恵器片(甕、坏蓋)が出士しています。
(3) 23-3・4トレンチ
墳丘東側の造り出しの有無を確認するため、西側造り出しの対称位置に調査区を設定しました。しかし、造り出しを確認することはできませんでした。3トレンチでは、2トレンチや、昨年度の調査(22-3・4トレンチ)と同様の標高29.0mの地点で底を確認しました。
3.調査のまとめ
今年度の調査では、後円部東側の中段斜面裾部、下段テラス、下段斜面、墳丘裾部を確認することができました。特に、1トレンチにおいては中段斜面裾部と下段テラス幅の全体を墳丘の東側において初めて確認できました。これにより、下段テラスの長さは5.2m、下段斜面の長さは約6.5mであることが判明しました。また、下段テラスの標高は32.0m、周濠底の標高は29.0mであり、その比高は3.0mであることがわかりました。昨年度の調査成果を加えて墳丘東側の復元を行うと各部分の長さは下段テラス5.2m、下段斜面6.5m、周濠底14.0m、外堤内側斜面7.3mとなります。また、標高は下段テラス32.0m、周濠底29.0m、外堤上面33.4m以上となり、墳丘東側では外堤上面が下段テラスより1.5m以上高いことがわかりました。これは、墳丘が東から西に傾斜する立地に築造されていることによるものだと考えられます。また、墳丘東側において造り出しを確認することはできませんでした。西側より小規模の造り出しが存在する可能性も考えられますが、平野側である西側のみに造り出しがあり東側にはないと考えることが妥当であると思われます。
以上のように、今年度の調査では後円部東側の墳丘の規模や構造が明らかとなり、久津川車塚古墳を復元する上で重要な知見を得ることができました。
展示遺物の写真
OLYMPUS E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZで撮影
発掘現場の写真
OLYMPUS E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZで撮影